今回は放課後等デイサービスにおける『個別サポート加算(Ⅲ) 70単位/1日』について解説していきます。
この加算は令和6年度の報酬改定から新設された加算で、加算の趣旨は以下の通りです。
不登校の状態にある障害児への支援については、放課後等デイサービスのみだけではなく、学校及び家庭、その他関係機関等と協働で支援を行っていくことが重要である。
これを踏まえ、本加算は、事業所が発達支援に加えて、学校と日常的に情報共有等を行いながら支援を行うとともに、不登校の状態にある障害児の家族に対する相談援助を丁寧に行うなど、学校及び家庭との緊密な連携の下で行う支援に対して、報酬上の評価を行うものである。
こども家庭庁【個別サポート加算(Ⅲ)の創設と取扱いについて】より抜粋
算定の要件や、算定するにあたり大切にしたい支援のポイントを考えていきます。
※算定要件等は公のものを引用していますが、各自治体によって解釈が変わる場合がありますのでご注意ください。
個別サポート加算(Ⅲ) 新設の流れ
報酬改定に向けての検討チームでは以下のような協議がなされていました。
厚労省の第39回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」資料
継続的に学校に通学できない児童(不登校児童)への支援の充実を図る観点から、放課後等デイサービスにおいて、通常の発達支援に加えて、学校との連携の下、学校への継続的な通学につながる具体的な支援を行った場合の評価を検討してはどうか。(厚労省HPより抜粋)
検討段階では「学校への継続的な通学に繋がる具体的な支援」という言葉が入っています。
ですが、新設の個別サポート加算(Ⅲ)の趣旨としては「学校登校をゴールとするのではなく、あくまで子どもの最善の利益を求めていく」という考え方で、学校や家族等と緊密に連携を取りながらより柔軟に当該児童の発達支援を組み立てていくということになります。
算定要件
主な加算要件については以下の通りです。
①個別支援計画書への記載(予め保護者の同意を得る)
②月に1回以上学校との情報共有を行う。
(関係機関連携加算(Ⅰ)(Ⅱ)の算定は不可)
③登校状況等を考慮し、情報共有時には「支援の継続の可否」について検討
④学校及び家庭との緊密な連携の下で行う
(授業終了後の利用でも算定可)
⑤月に1回以上家族への相談援助を行う。
(家族支援加算の算定は不可)
⑥市町村からの状況確認に対して回答する
(こども家庭庁【個別サポート加算(Ⅲ)の創設と取扱いについて】より要約)
学校との情報共有、家族への相談支援に関してはしっかりと記録に残しましょう。
③の「支援の継続の可否」についても必ず記録として残すように気をつけなければいけません。
また、本加算における「その児童が不登校であるかどうか」の判断基準ですが事業所が「不登校状態である」と判断した上で上記の要件を満たせば問題ないとの解釈です。
これに関しては、報酬改定のQ&A (問49) をご覧ください。
令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等(障害児支援)に関する Q&A VOL.1(令和6年3月 29 日)
算定単位数
算定単位数は 70単位/1日 です。
同月内における算定回数の上限はない為、対象児童が利用した日数分✖️70単位を算定することになります。
延長支援加算について
学校開校日での朝から利用などでは延長支援加算の算定もありえるかと思います。
延長支援加算算定の注意点についてはこども家庭庁から考え方が示されていますので以下のリンクからご確認ください。
リンク→個別サポート加算(Ⅲ)を算定している場合の計画時間及び延長支援時間の取扱いについて
支援のポイント
不登校になった理由は子ども一人一人違います。
理由を考えずして支援はできませんし「どこを目標地点に置くか」を決めなければより良い支援はできません。
その児童が「また学校に行きたい」と思っているのか「門を見ただけで体調を崩すほど嫌だ」という状況なのか、個々のケースで違ってきます。
どうしたいかなんて自分でもわかんないよ、、、
という子もいるでしょう。
大事にすべきところは
「半年後、1年後のために今何ができるのか」
という問いを、教育・医療・福祉等、他職種連携のもと考えるという事だと思います。
もちろん本人の気持ちを第一に考えながら「またみんなと同じように学校に行けたらいいよね」ということが唯一のゴールではなく、どんな支援が必要かを、家族、学校の先生、放デイの職員、医療機関のチームで考えていけると良いなと思います。
またその支援の厚みに対して「加算を取る」という考え方なのかなと思います。
まとめ
個別サポート加算(Ⅲ)について考えました。
これから不登校児支援のニーズはどんどんと高まってくるだろうなと思います。
これまでまかり通ってきた『体罰』や、『厳しい指導』という『大人の卑怯な手』のようなものが社会からなくなっていき、20人〜40人の子ども集団に対して一斉指導を行うという今の体制に限界がきているのだと感じています。
今求められているのは支援の個別化です。
子どもが40人いれば、それぞれへのより良い支援方法は40通りあると考えます。
もちろんそれを公教育で取り組むにはハードルが高すぎますが、40人に対してせめて10通りくらいあるイメージだとかなり変わってくるだろうと思います。
個別のニーズに応えながら、いかに子どもの主体性を伸ばしてあげられるかがこれから本当に求められる課題です。
不登校支援、難しいことも多いですが、放デイが担っていく部分がこれから増していくだろうと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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【図書紹介コーナー】
不登校支援に関して、関正樹先生の書籍がとても参考になりました。
「自分はそのままの自分でいいんだ」ということを子どもと一緒に考えていけるといいなと思います。
オンラインゲームやライブチャットなど、少し前までは考えられなかったようなコミュニティがたくさんあり、今を生きる子どもたちの『世界』に対して理解が必要なんだなと感じます。
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