今回は、子どもにとっての「遊び」について考えてみたいと思います。

「宿題はしたくない、遊びたい!」
子どもと関わっていると、こんな声を耳にすることがあります。
これはきっと子どもに限った話ではないですよね。
僕自身も、仕事で書類を作るよりも、テントを担いでキャンプに行く方がずっと好きです。
休みの日は野球観戦に出かけることもあります。
遊びとは何かということを考えた時、それは
だということかなと思います。
イヤイヤやらされるものは、遊びとは呼べません。楽しくなければ、それはもう遊びではなくなってしまうんですよね。
子どもの遊びに関わる方には、ぜひ「今、目の前で遊んでいる子どもは、その遊びを楽しめているか」を、一度立ち止まって考えてみてもらえたらなと思います。
この記事では、遊びの土台になる考え方、遊びを通して育つ力、そしてルールに苦戦する子への具体的な工夫まで、順番に紹介していきます。
放課後等デイサービスや児童発達支援の現場を主にイメージしています。
対象年齢の目安としては、主に未就学児〜小学生を想定していますが、考え方自体は年齢を問わず活かせるかなと思います。
遊びとは何か?
遊びとは、子ども自身が「やりたい」と思う気持ちが土台になっている活動のことです。
大人にとっての「好きな趣味の時間」と、「上司に言われて仕方なくやる残業」を思い浮かべてもらうと、その違いがイメージしやすいかもしれません。
同じ「作業」でも、自分から望んでやっているかどうかで、心の中身はまったく別物になりますよね。子どもにとっての遊びも同じで、「楽しい」という感情がなければ、それはもう遊びとは呼べなくなってしまいます。
遊びが育てているもの
「ただ楽しく遊んでいるだけ」に見える時間の中にも、子どもの発達にとって大切な経験がたくさん詰まっています。
- 体を使う遊び(鬼ごっこ・ボール遊びなど):体のバランスの取り方や体の動かし方を覚える「粗大運動」、道具を上手に扱うための「協調運動」の経験になります
- 手先を使う遊び(制作・工作など):指先の細かい動き(微細運動)や、最後までやり遂げる集中力、完成させた時の達成感(自己肯定感)につながります
- ことばを使う遊び(しりとり・カルタなど):語彙力や、一時的に頭の中で情報を覚えておく力(ワーキングメモリ)の練習になります
- 複数人でのルールのある遊び:順番を待つ経験、勝ち負けの受け止め方、相手に合わせる力など、社会性の土台になる経験がぎゅっと詰まっています
遊びの種類ごとに、育っている力は少しずつ違います。
ですので、いろいろなタイプの遊びに触れられるようにしてあげることも、支援の中で意識したいポイントだなと思います。
(当ブログでは集団遊び・制作あそびなど、遊びのアイデアもカテゴリ別にまとめていますので、良ければあわせてご覧ください。)
ただし、こうした力を伸ばすこと自体を目的にしてしまうと、遊びが「訓練」に近づいてしまいます。
一番の目的はあくまで「楽しむこと」で、これらの力は結果として後からついてくるものだと捉えておきたいところです。
とはいえ、目の前の子がどんな遊びを心から楽しめるかは、実際に一緒にやってみないと分からないことも多いです。まずはいろいろな遊びを試してみる、というくらいの気持ちで十分かなと思います。
なぜ「ルール」が必要になるのか
ただ、「楽しければなんでもやりたいことをやっていい」というわけにはいきません。
もし相手がいれば、その相手との決まり事が生まれます。
公園で遊んでいるなら、その公園での決まり事もあります。
このルールが、なかなか厄介です。
自分のやりたいように遊びたいけれど、それを相手が許してくれなかったり、周りの環境が許してくれなかったりします。ここで、
- 「相手に合わせる力」
- 「限られた環境で楽しむ工夫」
が必要になってきます。
この力は、周囲の大人や友達に教えてもらいながら、少しずつ身につけ、学んでいくものです。
子ども同士の遊びでは、まずは支援者がルールを決めてあげたり、子ども同士ではうまくいかない部分のクッション役として関わってあげたりすることが大切だなと思います。
「楽しみたいから、ルールを守る」という順番
ここで大事にしたいのが、ルールと楽しさの順番です。
子どもにとって遊ぶ目的は、あくまで「楽しみたいから」です。
ルールを守ること自体が目的ではありません。
「楽しいからやりたい。やりたいから、ルールを守る」という流れになるのが、一番いい状態だなと思います。
「ルールを守らないと遊べないよ」という言い方は、一見当たり前のことを言っているように見えます。
ですが僕自身は、少し違う伝え方を意識しています。



「楽しく遊ぶために、ルールを守ろう」
「楽しく遊ぶために、相手の気持ちも聞いてみよう」
というように、あくまで「楽しく遊ぶこと」が先にあって、ルールはそのための手段だという伝え方です。
例えばドッジボールで遊びたいと思っているからこそ、「顔は狙わない」「線から出て投げない」というルールにも納得できるようになります。
反対に、そもそも「ドッジボールなんてやりたくない」と思っている子どもに「ルールを守りなさい」と伝えても、なかなか難しいものです。
目的(楽しみたい)がはっきりしているからこそ、その手段としてのルールや、相手との調整が受け入れられるようになる、ということかなと思います。支援を考えるときは、まず「ルールを守らせること」からではなく、「楽しみたいという気持ちを大事にすること」から始めたいと、僕は思っています。
ルールに苦戦する子どもへの支援の工夫
「ルールを守りなさい」とだけ伝えてしまうと、楽しみたい気持ちより先に、ルールへの反発が生まれてしまうことがあります。ここで、先ほどの「楽しみたいから、ルールを守る」という順番を、実際の場面での工夫に落とし込んでみます。
鬼ごっこをしていると、「自分が鬼になったら、めちゃくちゃ嫌がって泣いてしまう子」がいます。
タッチされたくないし、鬼になりたくない。その気持ち、よくわかります。
この時、支援者としてはどう関わるでしょうか。
「ルールなんだから切り替えてやり」
「そんなのいいから早くタッチしに行って」
とつい言ってしまいそうになります。
ですが、支援の場では、ここで支援者がクッションになれるようにしたいところです。
こうなりそうなことをあらかじめ予測しておいて、次のようなルールを決めておきます。



「今回はお助けタッチマンがいます。もし自分が鬼になって助けてほしい時は、このお助けタッチマンにタッチをすると、鬼を変わってもらえます」
こうすることで、泣かずにタッチしに行けるかもしれません(それでも泣いてしまう子はいるかもしれません。その時はまた別の工夫を考えていきましょう)。
ここで大事にしたいのは、
- 「ルールを守って遊べた」
- 「タッチされたけど、切り替えてタッチしに行けた」
という成功体験です。
・子どもの「楽しみたい」を大事にしつつ
・それが叶えられるようルールを調整しながら
・ルールを守って遊ぶ経験を積む
この順番を意識できるといいかなと思っています。
配慮のポイント
「お助けタッチマン」のように、ルールを少し調整するだけで楽しめる子は多いですが、子どもによってつまずくポイントはさまざまです。他にもよくあるパターンを挙げてみます。
- 勝ち負けにこだわりが強く、負けると気持ちが崩れてしまう子:目標のハードルを個別に調整する(例:「今日は◯回勝てたら大成功」)。声かけの際も「負けたけど、最後まで頑張れたね」のように、結果より過程に目を向けた言葉を添えると、次への意欲につながりやすいです。
- 大きな音や、体が触れることに敏感な子:タッチ以外の合図(旗を上げる、名前を呼ぶなど)に置き換える。「みんなと同じルール」にこだわりすぎず、その子だけの合図を用意することも一つの工夫です。
- そもそも集団に入ること自体にハードルを感じる子:無理に輪の中に入れようとせず、まずは近くで見ている「見学」も参加のひとつとして認める。「見ているだけでもいいよ」と伝えることで、安心して距離を縮められる子もいます。
どの工夫にも共通するのは、「ルールを完全に守らせる」ことがゴールではなく、「その子なりに楽しめる形」を一緒に探していく、という姿勢だなと思います。
楽しいという成功体験が生む好循環
子どもは「楽しい」から遊んでいます。
楽しいというプラスの感情の中で成功体験を積めると、それが自信になり、「もっとやりたい」という気持ちにつながります。
実際、鬼ごっこで一度お助けタッチマンを使って無事にタッチできた子は、次の機会には自分からタッチしに行けるようになることもあります。この前を向く原動力に助けてもらいながら、「相手に合わせる」「環境に合わせる」という難しい課題も、少しずつクリアしていけるのかなと思います。
活動を考える際には、まず「楽しめるか」ということを、僕自身いつも一番に考えるようにしています。
ポイント
- 遊びは子どもが「やりたい」と思う気持ちが土台。イヤイヤやらされるものは遊びとは呼べない
- 遊ぶ目的はあくまで「楽しみたいから」。ルールを守ることは目的ではなく手段
- 「ルールを完全に守らせる」より「その子なりに楽しめる形」を一緒に探す
- 楽しい→成功体験→自信→もっとやりたい、という好循環を意識する
明日から意識してみたい問い
- 今、目の前の子はこの遊びを楽しめているか
- ルールを伝える前に、「楽しみたい」という気持ちにちゃんと寄り添えているか
- この子なりの「楽しめる形」を、まだ他に探せる余地はないか
まとめ
活動の合間の自由遊びの時間や、公園での遊びの時間も放デイや児発にとって大切な療育の時間です。
子どもが自分から何かに向き合い、力を伸ばしていく大切な時間だなと改めて感じます。
ルールに苦戦する場面に出会った時こそ、「どう叱るか」ではなく「どう工夫すれば楽しく続けられるか」を、一緒に考えていけたらいいなと思います。
こんなことで困った、こんな工夫がうまくいった、など、皆さんの現場のエピソードがあればぜひ教えてください。
集団遊びのアイデアについてもいくつか記事にしていますので、良ければあわせてご覧ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!



