得意を伸ばして、苦手を補う視点|子どもを「イガイガのボール」に例えて考える発達支援

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支援計画を考えるとき。
ケース会議で、子どもの様子を共有するとき。

「この子は〇〇が苦手で…」
「どうしたら〇〇ができるようになるかな」

気がつくと、話の中心がその子の「苦手」や「課題」ばかりになっている。そんな経験はないでしょうか。

もちろん、苦手をどう軽減するか、どう克服していくかを考えることも大切です。それだけ、その子のことを真剣に考えているからこそ出てくる視点だなと思います。

ただ、発達支援の中でもっと大切にしたいのが、「得意を伸ばして、苦手を補う」という視点です。

今回は、子どもを「イガイガのボール」に例えながら、この視点について皆さんと一緒に考えたいなと思います。
それでは一緒に考えていきましょう!!

目次

子どもを「イガイガのボール」に例えてみる

まず、子ども一人ひとりを、表面がでこぼこした「イガイガのボール」だと想像してみてください。

イガイガのボールの見立て

  • とんがり(飛び出ている部分)=その子の得意なこと、今すでにできていること
  • へこみ(飛び出ていない部分)=その子の苦手なこと
  • ボールが大きくなること=子どもが成長すること

とんがりの数や長さ、へこみの深さは、一人ひとり違います。同じ形のボールは、ひとつとしてありません。

どんな子どもにも、自ら大きくなる力がある

ここでひとつ、大切な前提があります。

それは、どんな子どもにも、自ら成長する力があるということです。
つまり、ボールは本来、自然と大きくなっていくものだということです。

ただし、自然と大きくなるためには、ボールの周りの環境がとても大切です。

たとえば、ボールの周りが極寒だったらどうでしょう。
ボールはカチコチに固まってしまい、本来持っている「大きくなろうとする力」を発揮できなくなってしまいます。

これは、子どもの力が足りないのではなく、環境がその子の力を抑えてしまっている状態です。

叱られることが多い、何をすればいいかわからない、苦手なことばかり求められる。そんな環境の中では、子どもはなかなか伸びていけません。

だからこそ、子どもの成長には、その子に合った環境が欠かせないのだと思います。

支援とは、とんがりを優しく引っ張ること

では、「支援する」とはどういうことなのでしょうか。

支援とは、子どもの成長を手助けすることです。
それは、その子に合った環境を整えることでもあり、その子の「できる」を引っ張ってあげることでもあります。

イガイガのボールで例えるなら、とんがっている部分を、支援者が優しく引っ張ってあげること。

そうすることで、ボール自体が持っている「大きくなろうとする力」を後押しすることにつながります。

へこみの部分は、とても掴みにくい

ここで、とても大切なことがあります。

イガイガのボールを想像してみると、とんがっている部分はつまみやすいですが、へこんでいる部分はとても掴みにくいです。

つまり、その子の苦手なところを直接つまんで伸ばそうとすることは、とても難しいということです。

それでも苦手な部分を伸ばしたいときは、まずそのすぐ近くにあるとんがりを引っ張ってあげる。
すると、隣のへこみも少し持ち上がって、掴みやすくなります。

たとえば…

文字を書くことは苦手だけれど、工作は大好きな子。
「文字の練習をしよう」と苦手から入るより、作った作品に名前カードをつけてみる、看板を作ってみる、といった形で「好き」「得意」の延長線上に文字を置いてあげる方が、ぐっと取り組みやすくなります。

体を動かすのは得意だけれど、友達とのやり取りが苦手な子。
「お友達と話す練習」を切り出すよりも、鬼ごっこのような得意な遊びの中で「タッチ!」「こっちだよ!」と自然に声をかけ合う場面をつくる方が、やり取りの経験を積みやすくなります。

ストレングス視点とは
その人の弱みや問題点ではなく、強み(得意なこと、好きなこと、すでにできていること、周りにある資源など)に注目して支援を考えていく捉え方のことです。福祉や心理の分野で広く大切にされている考え方です。

イガイガのボールの「とんがりを引っ張る」という話は、まさにこのストレングス視点に通じるものだなと思います。

ボールが大きくなる=できることが増え、自信が育つ

ボールが大きくなるということは、その子のできることが増えていくことです。
そして同時に、その子が自分に自信を持てるようになっていくことでもあります。

ここで、改めて確認しておきたいことがあります。

障害は「治る」ものでも、「治す」ものでもありません。

支援の目的は、へこみを消してツルツルのボールにすることではありません。

さらに言えば、障害と呼ばれるものを、その子の側だけでなく環境の側からも問い直すことが大切です。
「この子をどう変えるか」だけではなく、「この子の成長のために、今の環境をどう変えればいいか」という視点を持つこと。

社会モデルとは
障害を「その人個人の問題」として捉えるのではなく、「社会や環境がその人に合っていないことで生まれる困りごと」として捉える考え方です。

この視点が、次の話につながっていきます。

ボールが転がる「道」は、社会そのもの

イガイガのボールは、コロコロと転がりながら前に進んでいきます。
この「転がって進むこと」を、社会の中で生きていくことに例えてみます。

もし社会という道が平らだったら、ボールはできるだけ丸に近い形の方が、転がりやすくなります。

そして今の社会の道は、多くの場合、マジョリティ(多数派)に合わせた形でつくられています。
そうなると、その道で転がりやすい形のボールほど、生きやすいということになります。

反対に、とんがりやへこみが大きい、いわばマイノリティ(少数派)な形のボールは、マジョリティに合わせてつくられた道では、どうしても進みにくくなってしまいます。

進みにくいのは、ボールの形が「悪い」からではありません。
道の形と、ボールの形が合っていないからです。

大切にしたい2つの視点

ここで、大切にしたい視点が2つあります。

① ボールの形を変えるのではなく、ボールを大きくする

ひとつ目は、イガイガのボールを、いかにマジョリティの形(丸い形)に近づけるか、という視点ではないということです。

とんがりも、へこみも含めて、その子それぞれの形を認めること。
そのうえで、ボール自体を大きくしていくことで、前に進む力(推進力)を強めていくことです。

ボールが大きくなれば、転がる力も大きくなります。
多少でこぼこした道でも、乗り越えて進んでいける力がついていきます。

② 社会の道を、もっと多様な形にしていく

2つ目は、社会という道の形も、ひとつではなく、さまざまな形があるべきだということです。

ここに進めば比較的平らな道。
こちらに進めば、でこぼこが多い道。
ここには深いくぼみがあるけれど、そのくぼみにぴったりはまって、むしろ進みやすくなる形のボールもある。

道の形が多様であれば、どんな形のボールにも、進みやすい道がどこかにあるはずです。

そして、その道を整えていくのは、子ども本人ではなく、周りにいる大人や社会の役割だなと思います。


ポイント

  • 子どもを「イガイガのボール」に例えると、とんがり=得意なこと・できていること、へこみ=苦手なこと、ボールが大きくなる=成長
  • どんな子どもにも自ら大きくなる力がある。その力を発揮できるかどうかは、環境に大きく左右される
  • 支援とは、環境を整えること、そしてとんがり(得意)を優しく引っ張って、成長を後押しすること
  • へこみ(苦手)は直接掴みにくい。近くのとんがりを引っ張ることで、苦手にも手が届きやすくなる
  • 障害は「治る」ものでも「治す」ものでもない。ボールの形を丸く変えるのではなく、ボールを大きくすることを目指す
  • 社会という道も、多様な形に整えていく必要がある

まとめ

子どもの成長を考えるとき、私たちはつい「その子をどう変えるか」に目が向きがちです。

でも、本当に大切なのは、
ボールを大きくする視点(子どもの成長)と、
どんな形のボールでも受け入れられる道があること(社会側の環境の多様性)、
この2つを両方持ち続けることなのかなと思います。

支援者は、目の前の子どものとんがりを引っ張ることができる存在です。
そして同時に、事業所や学校、地域という「道」を整えていくことにも関われる存在だなと思います。

一人ひとりのボールの形を大切にしながら、その子のボールが大きく、力強く転がっていけるように。
これからも、皆さんと一緒に考えていけたらうれしいです。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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