こども性暴力防止法|放デイの研修・指針・保護者周知ガイド

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前回の記事を読んでくださった方から、こんなご質問をいただきました。

「こども家庭庁の動画教材を職員に見てもらえば、それで研修は終わりですか?」

結論からお伝えすると、動画を見てもらうだけでは研修の要件を満たせません。
座学に加えて、演習をセットで行うことが法律上求められています。

前回の「2026年12月施行「こども性暴力防止法」放デイ・児発が今から準備しておきたいこと」では、2026年12月25日に施行される「こども性暴力防止法」について、放デイ・児発が義務対象になることや、犯罪事実確認の流れを中心にお伝えしました。

今回は、その中でも特にお問い合わせの多かった
「研修をどう組み立てるか」
「事業所ごとに指針やマニュアルを作らなければいけないのか」
「保護者への周知はどう進めればいいのか」
の3つを、こども家庭庁の施行ガイドラインをもとに、もう少し踏み込んで一緒に考えたいなと思います。

放課後等デイサービスをイメージして書いていますが、児童発達支援などにも共通する内容です。

目次

研修は「動画を見てもらうだけ」で足りるの?

研修事項とは
ガイドラインでは、研修で扱うべき内容として次の8項目が定められています。これらを座学と演習の両方で扱うことが求められています。

  • こどもの権利についての理解や、法の概要といった基礎的事項
  • 性暴力・不適切な行為の範囲
  • 疑いの早期発見の仕方
  • 相談・報告を受けたときの対応
  • 被害を受けた子どもの保護・支援
  • 犯罪事実確認の手続き
  • 防止措置の基礎
  • 厳格な情報管理の必要性

演習とは
座学で得た知識を「自分ごと」として捉え、実際の場面で適切に対応できるようにするための時間のことです。
目標は、こどもに接する具体的な場面での適切な対応を、理解・イメージできるようになること。

方法としては、加害者が陥りやすい「認知の偏り」と呼ばれる一方的な思い込みをシミュレートしたり、性暴力や不適切な行為の疑いが生じた際に実際に取るべき行動をシミュレートしたりすることが挙げられています。

ガイドラインでは、例として「現場で適切か否かの判断が難しい『身体接触』の在り方について、現場の職員が悩みや認識を共有しながら、個別具体的に考えていく」といった演習が紹介されています。動画を流すだけでは、この演習の要件を満たせません。

研修の実施方法には、こども家庭庁の標準動画を使う「標準研修」、より短くまとめた「要点研修」、事業所や業界団体が独自に行う「独自研修」の3種類があります。標準研修と要点研修は動画に演習用の課題も含まれていますが、ガイドラインでは「標準研修においては、可能な限り集団での演習を行い、対話等を通じて、気づきや考えを深めることが重要」ともされていて、動画を個人で見るだけで終わらせるのではなく、話し合いの場を作ることが望ましいとされています。

研修の実施主体は問われません。事業所が自前で行う必要はなく、業界団体などが実施する外部研修に職員を参加させることも認められています。複数の事業所による合同開催や、虐待対応研修など他の研修と組み合わせて開催することも想定されています。

受講のタイミングは、原則として子どもに接する業務に従事する前です。すでに働いている職員については、施行日(2026年12月25日)より前に受講させておく必要があります。また、1回受けたら終わりではなく、定期的に受け直すことや、日々のミーティングなどで死角のある場所や「不適切な行為」の判断に迷う事例を振り返ることも勧められています。なお、研修は事業所が従事者に必ず受講させなければならないものなので、受講時間は労働時間に含まれる、という点も実務上押さえておきたいところです。

研修を、誰に・何を頼むか

ガイドラインでは、研修の実施にあたって「第三者性の確保の観点から、専門的な知見を有する外部有識者等による講義や研修教材の監修を受けることが望ましい」とされています。ただ、一口に「外部に頼む」といっても、事業所が本当に必要としているものは、大きく2つに分かれるのかなと感じています。

一つは、性暴力等そのものに関する専門知識です。法律の内容や、こどもへの性暴力の特性、加害に至る要因といった、いわば「知識」の部分。ここに強みを持つ講師に依頼するのは、もちろん大切な選択肢の一つです。

もう一つは、その知識をもとに「うちの事業所だったらどう動くか」を、職員同士で対話しながら考えていくプロセスです。ガイドラインが演習に求めているのも、まさにここで、「身体接触の判断」のような正解のないテーマについて、現場の職員が悩みや認識を共有しながら考える時間のことでした。

わたし自身の専門性は、どちらかというと後者の「ファシリテーション」にあります。
単に知識を伝えるだけでなく、グループワークや対話を通じて、職員同士が「実はこう思っていた」「自分はこう対応している」とお互いの考えを知り合う時間を作ることを大事にしています。

こうした対話の積み重ねは、職員間の相互理解や風通しの良い環境づくりにつながり、それ自体が「気になることを言い出しやすい」「疑いの芽を早期に共有できる」という、性暴力の防止にも結びついていくのかなと思っています。

なので、今の事業所に必要なのが「知識が足りていないこと」なのか、「職員間で対話する土台が足りていないこと」なのかによって、頼るべき相手も変わってくるのかなと思います。後者に近いなと感じる方は、支援者支援の研修事業ページからお気軽にご相談ください。

事業所ごとに指針やマニュアルを作らなければいけないの?

服務規律等の整備・周知とは
「こういう行為はしてはいけない」
「不適切な行為の範囲はここまで」
ということを、事前に文書で明確にしておく取組のことです。

ガイドラインでは、各事業所において、事前に服務規律等を定めた文書等で、次の3点を明確化することが必要とされています。

・児童対象性暴力等及び「不適切な行為」の範囲
・これらの行為を行ってはならないこと
・これらの行為を行った者については厳正に対処すること

の3つです。

ここで気になるのが「新しく専用のマニュアルを1から作らないといけないのか」という点だなと思います。ガイドラインを確認したところ、義務対象の事業所(放デイ・児発など)に対して、決まったひな形通りの「対処規程」を新規作成しなければならない、という条文までは見当たりませんでした(認定事業者、つまり学習塾やスポーツクラブなど任意で認定を受ける事業者については、規程の作成が認定の条件として明記されています)。

とはいえ、対象業務従事者については内部規程(就業規則等)やマニュアル等、児童等・保護者については入学・入園時に交付する資料等により、上記の3点を明確化して周知することが必要、とされているので、実質的にはなんらかの文書は必要になります。既存の就業規則や運営規程に、性暴力・不適切な行為の範囲などの項目を追記する形でも構いませんし、別紙でわかりやすいマニュアルを作る形でも構いません。事業所の実情に合わせて、無理のない形を選んでいただけたらと思います。研修(本記事の前半でお伝えした内容)や、次でお伝えする保護者への教育・啓発と合わせて周知していく、という位置づけです。

保護者への周知はどう進めればいい?

ガイドラインでは、児童等本人への教育・啓発と、保護者への周知・啓発の両方が必要とされています。
児童等には、こどもの権利や「プライベートゾーン」「境界線」といった性に関するルールを、発達段階に応じて伝えることが求められています。

ここでは、支援者の皆さんに特に関わりの深い、保護者への周知について整理します。

保護者への周知で押さえておきたいポイント

  • 保護者説明会や、日々の取組(相談窓口の周知など)の中で、適切なタイミングで周知・啓発を行う
  • 「不適切な行為」の範囲は事業所によって異なり得るため、ルール作りの際に保護者にも意見を照会したり、定期的に周知したりすることが望ましい
  • 被害の早期把握には保護者の気づきも重要なきっかけになるため、子どもの様子が気になるときや、子どもから気になる発言を聞いたときの相談先を明確にして周知しておく
  • 犯罪事実確認の結果や疑いに関する情報は、個人の重要なプライバシーに関わるものであり、うわさが広まると、当該の子どもを傷つけたり(二次被害)、従事者の利益を大きく損なったりするだけでなく、制度そのものへの信頼を失わせてしまう。うわさを立てたり広めたりしないよう、丁寧に周知し、協力を呼び掛けることが重要
  • 何か事案が発生した場合は、事後になったとしても可能な範囲で保護者への説明を行うこと、その時期については適切なタイミングとすることを、あらかじめ周知しておく

特に4つ目は見落としがちだなと感じます。制度への理解を求めるだけでなく、「もし何かあったときの情報の扱い方」まで、事前に保護者に伝えておくことが、いざというときの混乱や誤解を防ぐことにつながるのかなと思います。

ポイント

ポイント

  • 研修は動画を見せるだけでは不十分。座学に加えて演習が必須で、特に集団での話し合いが推奨されている
  • 事業所ごとに新規のマニュアルを1から作る法的義務はないが、就業規則や運営規程などの文書で「不適切な行為の範囲」等を明確化し、周知する必要がある
  • 保護者への周知は、説明会や日々の取組の中で継続的に行うことが大切。特に「事案発生時は事後でも説明する」ことを、あらかじめ伝えておくと安心

まとめ

研修も、指針づくりも、保護者への周知も、どれも「一度やって終わり」ではなく、日々の運営の中で少しずつ育てていくものだなと思います。特に研修は、動画を見せて終わりにするのではなく、現場の職員同士で「うちの事業所だったらどう対応する?」と話し合う時間をつくることが、いざというときに本当に活きてくるのかなと感じています。

「うちの事業所に足りないのは知識なのか、それとも職員同士で話し合う土台なのか」を考えてみることが、体制づくりの最初の一歩になるのかなと思います。後者に心当たりがある方は、支援者支援の研修事業ページからお気軽にご相談ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


参考資料

研修ページへ(HPへリンク)

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